Let's learn Japanese with Story Time!
In this page, we will explore English translations of Japanese short story of ”ともだちはぶた” (TOMODACHI HA BUTA).
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ともだちはぶた TOMODACHI HA BUTA
わにのきよしくんは、よくこういう。
「おれは、わにで、しのぶは、にんげんだ」
「うん、そうだね」
「だから、おたがいに、ちがうところがあって、とうぜん」
「うん、そうだね」
「それを、みとめあってこそ、ほんとうのともだちに、なれると、おもわねーか」
「うん、そうだね。でも、それって、トイレからでて、手をあらわないりゆうに、ならないよ」
きよしくん、それでもやっぱり、手をあらわない。
「なんで、手をあらわないの?」
ぼくがきいたら、「ハンカチもってないし」
それもりゆうに、なんないとおもう。
けっきょくきよしくん、そのままトイレから、でていった。
と、おもったら、またもどってきた。
「どうしたの、きよしくん?」
「くそっ。そとで、あいつが見はってた」
「あいつって、だれ?」
「花子だよ」
ぶたの花子ちゃんは、ぼくらのクラスの、えいせいがかり。
ちゃんと、みんなが手をあらってるか、見てるんだ。
きれいずきで、きちょうな、花子ちゃんにはぴったり。
さすがのきよしくんも、花子ちゃんには、かなわない。
なんてったって、口うるさいんだ。
それに、ちゃんとしたことしか、いわないから、きよしくんも、はんろんできない。
きよしくん、やっとまじめに、手をあらいながら、「おいしのぶ。おまえ、あしたひまだろ」
いつもの、ちょうしで、きめつけてきた。
たしかに、なにも、よていないけど。
「いっしょに、いかないか」
「えっ? どこへ?」
「きまってんだろ」
きよしくん、そういうと、トイレの、そとを見た。
「花子ちゃんち......」
そうか、そうだったんだ!
おもわず、わらえてきた。
ぼくたちのクラスは、ともだちかていほうもん、ていうのをやってる。
やすみの日、クラスの、だれかの家をたずねて、しゅざいしてきたことを はっぴょうしたりする。
このまえの、やすみの日、ぼくは きよしくんの家にいった。
そしてこんしゅうは、きよしくんが花子ちゃんちを、たずねるみたい。
先生は、ひとりだけなら、ともだちを、つれていってもいいって、いってた。
「しのぶ、しんゆうだろ」
「どーしよっかな」はじめて、きよしくんにたいして、つよきになれたよろこび。
「なあ、たのむよ」
「うーん、なやんじゃうなあ」
いったとたん、きよしくん、「いかねーと、かむぞ」
「いでーっ」もう、かんでるし。
しかも、あたままるかじり。
「いたいよ、きよしくん」
「おおげさだって。ちょっとかるく、かんだだけだろ。あまがみっていうの、しらねーのか」
「それは、犬やねこが、かわいくかむことを、いうんだよ」
「おれが、かわいくないって、いうのか。ほんきがみ、してやろーか」
きよしくん、にらむとこわい。
「わかったよ。いっしょにいく」
けっきょく、きよしくんのペースに、なっちゃった。
つぎの日、じてんしゃで、きよしくんの家にいくと、ベッドのなか、ばくすいしてた。
「きよしくん、はやくおきてよ。やくそくのじかん、すぎてるよ」
なんでぼくが、へやにまでいって、おこさなきゃいけないの。
しかも、やっと目がさめたきよしくん、「きょうなんだっけ?」
まだ、ねぼけてるし。
「花子ちゃんち、いくんだろ」
「あっ、そうだ!」きよしくん、あわててとびおきた。
「あかちゃんみたいな、かっこうで、ねてるんだね」
「こう見えても、おぼっちゃんなんだ。そんなことより、なんで、もっとはやくおこさねーんだ!」
ひどいやつあたり。
だいたい、ぼくのほうが、家、とおいんだし、きよしくんのとこなんて、みちはさんで、むかえが花子ちゃんち。
きよしくんがきがえて、やっとそとへでると、「わっと!」
げんかんのまえで、花子ちゃん、こわいかおしてにらんでた。
「ごめんね、おそくなって」なぜかぼくが、あやまった。
きよしくんといると、いつもこう。
「しのぶも、はんせいしてることだし、ゆるしてやりなげ」きよしくん、きっとウケねらい。
いつもなら、みんなわらうけど、花子ちゃん、わらうどころか、「じかんにおくれるって、いちばん、しつれいなことだよ。だれのじかんも、お金では、かえないんだから」
ぼくもそうおもう。
いちどでいいから、花子ちゃんみたいに、びしっと、いってやりたい。
なのにきよしくん、はんせいするどころか、ぼくのみみもとで、ささやく。
「おい、しのぶ。なんとかいってやれ」
「えっ、なんて......」
「ねてたんだから、しかたねーだろって」
「いえるわけないよ」
すると花子ちゃん、「ふたりで、なにぶつぶついってんの」
「いやちょっと。ぶつぶつこうかん、とかいっちゃって」
きよしくんのだじゃれも、花子ちゃんのまえだと、なんかさえない。
なつにきく、クリスマスソングみたい。
「とにかく、家にはいって」
花子ちゃんのあとについて、げんかんに、足をふみいれたとたん、「ぬいだくつは、ちゃんとそろえてね。きよしくんは、あしふいて」
じぶんの家でも、したことないのに。
そして、花子ちゃんのあとに、ついてくと、リビングとかじゃなくって、せんめんじょに、とおされた。
「まず、手をあらって」
「なんでだよ。トイレにいった、わけでもないのに」
トイレにいってもあらわない、きよしくんがおこるのも、へんだけど。
どちらにしても、花子ちゃんは、「うちにきたら、うちのやりかたに、したがってもらいます」
むずかしいことばで、きっぱり。
「くそっ、じゃあ、こんどうちにきたら、ブンブンしっぽ、ふりまわしてやる」
たしかに、きよしくんの家、かべやはしらがいたんでた。
きっと、しっぽのせいだ。
そのあとやっと、リビングへとおされた。
ちっちゃな、おとこのこが、あそんでた。
へやにはいるなり、花子ちゃんのかおいろがかわる。
「だめでしょ。あそぶおもちゃは、ひとつだけって、きめたでしょ」
木でつくってある車や、おえかきちょう、わなげや、ジグソーパズル、いろんなおもちゃが、ちらばってた。
花子ちゃんは、ぼくときよしくんに、「おとうとの、花まる」って、しょうかいした。
「ほら、花まる、ごあいさつしなさい」
花子ちゃんは、おもちゃをとりあげると、あたまをおさえて、おじぎをさせた。
ちょっとごういんだし、かわいそう。
「さっ、きよしくん、なにからはじめる?」
リビングのソファーにすわると、サクサクしたちょうしで、花子ちゃんがすすめた。
「はやくしないと、じかん、あっというまに、たっちゃうよ」
とけいは、もう十一じをまわってる。
「おいしのぶ、なにからはじめるんだ。おれ、なんにもきいてねーぞ」
「えっ? きよしくん、しつもんとか、かんがえてこなかったの?」
「しのぶ、なんにもいって、くれなかったじゃないか」
「いわなくても、ふつう」て、いいかけてやめた。
きよしくんに、ふつうはつうじない。
「じゃあ、このまえきよしくんちで、ぼくがやってたように、したらいいよ」
「なるへそ」
きよしくん、なんかすごくうれしそうに、花子ちゃんとむきあった。
「じゃ、まず」
「まず、なにかな?」
「ケーキとジュース、だしてクレヨン。ケーキのかわりに、カステーラでもいいけど」
「ちょっときよしくん、そんなの、じぶんから、いうことじゃないよ」
「このまえ、おれんち だしただろう」
「たしかにでただけど.....」
「だろ。ケーキたべて、まず、いぶくろが、くつろぐ。そのあと、あたまの中もくつろいで、はなしが、できるんじゃねーか」
「きよしくんのあたまの中、いつもくつろいでると、おもうけど。広いそうげんが、ちへいせんのむこうまで、つづいてるかんじ」
こんなこと、きよしくんにいえるの、花子ちゃんしかいない。
「あまがみ、してやろうか」きよしくん、あごをガギガギならす。
でも花子ちゃんがいってること、あたってる。
ついでにいうと、わたがしみたいなくもが、ぷっかりぽっかり、ういている。
はんたいに、花子ちゃんのあたまのなかって、はぐるまが、いっぱいつまった、きかいみたい。
きよしくん、がんばったけど、けっきょく、おちゃしかでてこなかった。
「ちっ、つまんね」でた! きよしくんの、口ぐせ。
これがでると、もうすぐ、「かえろうぜ、しのぶ」とかいいだす。
「ごめんね。うちは、たんじょうびぐらいしか、ケーキはたべないの」
あれっ?
そういえば、花子ちゃんたちいがい、家にだれか、いるようすがない。
「おとうさんとおかあさん、でかけてるの?」
そしたら花子ちゃん、「うち、おとうさんいないし、おかあさんしごとだし」
さんすうのもんだいに、こたえるみたいに、たんたんという。
まずいこと、きいちゃったかな。
そうおもって、きよしくんを見たら、
「そうか、わかった」きよしくん、にんまりわらう。
「なにがわかったの?」
「だから、じぶんで、よういすればいいんだ」
そういってきよしくん、くびからさげた、ガマ口に、手をつっこんだ。
「いちごだいふく、くうか」ちゃんと四つ、だしてきた。
「なんでそんなもの、もってんの」
「もしものときのために。くうだろ」
もちろんたべるけど、なんかへん。
ぼくは、花子ちゃんにもすすめた。
「たいへんだね、花子ちゃん」
「うん。だから、おかあさんがいないとき、わたしがこの家の、おかあさんなの」
「なるほど。しっかりしてるはず」
おとうとの、花まるがそばにきて、テーブルのいちごだいふくに、手をのばした。
とたんに、「ピシッ」と、おとがした。
花子ちゃんが、花まるの手をたたいた。
「たべちゃだめ。もうすぐ、おひるごはんでしょ」そういう花子ちゃんも、もちろん、手をださない。
「いいだろ、それくらい」きよしくんはいうけど、花子ちゃん、かおいろひとつ、かえない。
「うちにはうちの、きまりがあるの。ごはんの、二じかんまえからは、ぜったいに、おかしをたべない」
「じゃあ、ひるごはんを、ずらせばいいだろ。きょうはやすみだし、どーってことねーよ」
「あるの。ちゃんとごはん、たべてくれないと、わたしがこまるの」
「ほら、けっきょくじぶんが、こまるからだろ。おとうとのきもち、かんがえてねえ」
きよしくん、いちごだいふくを、ぱくっとたべた。
花子ちゃん、目がおこってる。
花まるは、まだほしそうに、テーブルのだいふくを見つめてる。
はやくしまってあげないと、ちょっと、ざんこく。
そしたら、きよしくん、「ほら、えんりょせず、くえよ」
花まるの手に、ちょくせつのせた。
「だめっ」花子ちゃん、ちょっと、きびしすぎ。
「くったあと、体をうごかせば、いいんだろ。そしたら、はらもへる」
きよしくん、ぼくを見ると、「おい、しのぶ。家から、サッカーボールもってきて」
「えっ、ぼくが......」
「だって、しのぶしか、もってねーし」
もう、きよしくんたら、ほっときゃいいのに、へんなとこで、いじになるんだから。
ぼくはじてんしゃを、はしらせた。
サッカーボールを、とってもどると、花まるが、’口をもぐもぐ、うごかしていた。
いちごだいふく、たべたんだ。
「さあ、公園いこうぜ」
きよしくんが、花まるの手をとった。
すると、「それもだめ」花子ちゃんがいう。
「なんでだよ」
「おかあさんが、かえってくるまで、家にいなきゃいけないの」
「ふざけんな!」きよしくんのしっぽが、バシンと、ゆかをたたきつけた。
「きゃっ、家、こわさないで。そんなことするんなら、かえってよ」
「こんな家いたくねえよ。おい、花まる、家出しよーぜ」
すると、いみが、わかってるのか、どうなのか、花まるは、「うん」て、うなずいた。
「しのぶ、かりるぜ」
きよしくん、サッカーボールを、わにづかみして、リビングから、でていった。
「ちょっと、まってよ」
げんかんまで、おいかけると、「しのぶは、ここにいて、することがあるだろ」
「なに?」
「ともだちかていほうもん。あとできくから、しゅざい、たのんだぜ」
「わっ、きよしくん、にげる気だ」
「ちがうよ。家でするんだって。さがすんだったら、スポーツ公園にいるから」
そこならあんしんだね.....っていうか、いきさきを、ちゃんというのって、家出になるのかな?
きよしくん、やっぱりそとがいいみたい。
だって、しっぽをぷるんぷるんふるわせ、かけていった。
サイコーに、ごきげんなしょうこ。
もちろん、花まるもいっしょに。
それにしても、どうしよう。なんか、きぶんがおもい。
ぼくは、げんかんをしめて、リビングへもどった。
テーブルの上は、きれいにかたづいて、花子ちゃんのすがたが、なかった。
「花子ちゃん、どこいったの?」
へんじは、なかったけど、しょっきが、カシャンって、あたるおとがした。
リビングのおくの、キッチンから。
そっとのぞくと、花子ちゃんがいた。
でもすぐには、声かけられなかった。
コップあらいながら、ないていたんだ。
「花子ちゃん、なかないで」そういうのが、せいいっぱい。
「ごめんね。いつもだけど、きよしくんて、ごういんだから」
なんでだろ。またぼくが、あやまってる。
花子ちゃん、かおをあげると、「ありがとう。しのぶくん、やさしいね」
そんなこといわれると、ちょっと、てれちゃう。
それに、しんこくなかおしてたから、いえなかったけど、花子ちゃん、口のよこに、白いあんこがついている。
「もし、花まるが、けがでもしたら、どうしよう。まいごとかに、なっちゃったら」
花子ちゃん、しんぱいが、たえない。
「だいじょうぶ。スポーツ公園にいくって、いってたから。まいごになんないし、けがしても、すりきずくらいだよ」
ところが、花子ちゃんの顔いろ、ますますさえない。
「あそこ、あぶないよ」
「えっ、なんで?」
「だって公園のむこうに、ままぞん川が、ながれてるもん。もし川におちたら.....」
「しんぱいしすぎだって」
花子ちゃん、せきにんかん、つよすぎ。
学校では、それがいいところだけど、おかあさんのかわりまで、ちょっと、かわいそう。
「そんなにしんぱいなら、ぼくらもいっしょに、いこうよ」
花子ちゃん、まどのそとを見る。
もちろん、ここから見えるわけない。
「見えない場所で、なやんでても、しょうがないよ」
「うん、わかった」
花子ちゃん、やっとうごく気になったみたい。
しょっきを、かたづけたあと、とじまりてんけんして、スポーツ公園にむかった。
ボールけりして、あそぶなら、きっと公園のはしっこ。
川におりて、さかなつり、している人もいる。
と、むこうから、きよしくんが、ひとりでかけてきた。
「あれっ、きよしくん、どうしたの。花まるくんは?」
「しのぶ、どうしよう。ながされちゃった」
「えっ、なんで?」
「しっぽ、ふりまわしてたら、とんでっちゃった」
「あれやったの!」
きよしくんのしっぽに、つかまって、ぶるんぶるん、ふりまわされてあそぶのが、まえにはやった。
目がまわって、おもしろいけど、あぶないからって、先生からきんしされた。
「とにかくいかなきゃ」
花子ちゃん、かおがまっさお。
はらっぱから、くさむらのみちをかけおりて、かわにでると.....。
「あれっ?」花まるがいた。
しんぱいそうに、こっち見てる。
そして、「もう、あんなとこ」
花まるが、ゆびさしたのは、川のまんなか。
ぽっかりぷっかり、ボールがのんびり、ながれてく。
「あれって、ぼくのボールじゃない」
「うん。だから、どうしようか、こまってたんだ」
花子ちゃんは、花まるのところへ、すっとんでった。
よかった、よかったって、体をさすってる。
「きよしくん、はやく、とってきてよ」
「お、おれが」
「そうだよ。だってきよしくん、わになんだから、水の中もへいきでしょ」
「あ、そうだった」
あきれた。じぶんが、わにだってこと、わすれてたんだ。
いつも、おれは、わにだから、とかいってんの、やっぱりいいのがれ。
きよしくん、ふくをぬぐ。
「ぬいだら、きちんとたたまなきゃ」花子ちゃん、どんなときでも、きちょうめん。
「あとで、体ふくタオルあるのか」きよしくんが、しんぱいすると、「ここにある」と、花子ちゃん。
ああっ、ボールがながれてく。
「きしくん、はやくして」あせってるの、ぼくだけみたい。
きよしくんが、ざぶんと川にはいった。
さすが、およぐのじょうず。
せんすいかんみたいに、すーっと水をきってすすむ。
ボールまで、あとすこし。
よかった、とおもったそのとき、「こどもが、ながされちゃった。だれか、たすけてー」ひめいが、きこえた。
きいろいうきわの、おとこのこが、手をばたつかせながら、ながされていく。
きっと、水あそびしてたんだ。
「きよしくん、あっち! あっちがさきだよ」
きこえたみたい。きよしくん、すぐ、ほうこうてんかん。
まっすぐ、こどものほうへ。
しっぽを、つませると、きしへむかっておよぐ。
きよしくん、ちからづよい。
こどもをたすけて、かわにあがると、きよしくんは、たちまちヒーローになった。
ちょうど、サッカーの、しゅざいにきていた、しんぶんきしゃから、インタビューされたり、しゃしんをとれたりで、おおいそがし。
「あの、きよしくん、それよりあっち.....」ぼくが、川をゆびびさしても、「うん、あとでな。やっぱインタビューは、するより、されるほうが、きぶんいいな」とかいって、ごきげん。
そのあいだに、ボールは、ピンポンだまみたいになって、とうとう見えなくなった。
まあ、人のいのちを、たすけたんだから、しかたないよ。
ぼくはじぶんに、いいきかせた。
花子ちゃんも、ほっとしたのか、そのあと、かえろうって、いわなかった。
いっしょになって、おいかけっこして、あそんだ。
かえりみち、花まるがきゅうに、「きょうのおねーちゃん、ほんとうのおねえちゃんみたいで、すきっ」て、いった。
ぼくはちょっと、むねが、ちくっとなった。
花子ちゃんだって、すきで、口うるさいおねえちゃん、やってるわけじゃない。
ぼくは、だまってたけど、きよしくんは、「うそもほんとも、ねえ。おねえちゃんは、いつだって、ほんとうの、おねえちゃんだ。そんなこといってると、かたぐるま、してやんねーぞ」
きよしくん、かたにのせた花まるゆすって、きゃっきゃいわせた。
つぎの日、きよしくんの、はっぴょうがあった。
はんぶんたのしみで、はんぶんしんぱい。
きのうは、いろいろあったから、はなすこと、たくさんあるはず。
きよしくんが、まえにでる。さあちゅうもく。
「花子の家は、おやつがでません。じぶんで、もっていってください」きよしくん、そのままいちれい。
「えっ、たったそれだけ」
「うん」
みんな、げらげらわらってた。花子ちゃんもわらった。
ぼくだけ、ちょっとふまん。
学校のかえりみち、きしくんに、きいてみた。
「ほかにもちいっぱい、いうことあったのに、なんでいわなかったの。おかあさんのかわりに、家のようじしたり、おとうとのめんどう、みたりしてるって」
するときよしくん、「しのぶだったら、いってほしいか。おれはいやだ。家のことで、みんなの見かたがかわったら、いやだろう。たぶん花子も、そうだとおもう」
きよしくん、見てないようで、見てるんだ。花子ちゃんのこと。
「そうだしのぶ。きのう、人たすけのおれいに、これもらった。ほらこれで、サッカーボールでも、ミートボールでもかえよ」
きよしくん、ガマ口から、かみのたばをだした。
「わっ、一万円分のしょうひんけん。いいの、もらって」
「おれのガマ口に、こんなもん、にあわねーから。そういえば、しのぶ。おれきのう、いちごだいふく、四つだしたよな。ひとつ、のこってたはずだけど、あれ、どーなった。おまえ、くっただろ」
花子ちゃんの口のまわりに、あんこがついてたの、思いだした。
もちろんいわない。
「なあしのぶ、だれも、おまえにやるとは、いってなかったぜ」
きよしくんって、こころがひろいのか、せまいのか、よくわからない。
でもひとつだけ、たしかなこと。きよしくんは、じぶんになにがにあうのか、よくわかってる。
きよしくんの、ガマ口にあうのは、きっと、あいとゆうきと、きょうのおやつ。
おしまい。