TOMODACHI HA UMA ともだちはうま - Learn Japanese with Story Time

TOMODACHI HA UMA ともだちはうま - Learn Japanese with Story Time

Let's learn Japanese with Story Time!

In this page, we will explore English translations of Japanese short story of ”ともだちはうま” (TOMODACHI HA UMA).

For Japanese listening practice, visit:

https://youtu.be/mDunV3BPpak

 

ともだちはうま TOMODACHI HA UMA

学校のかえり道。

わにのきよしくん、なんだかしずんだ顔をしてる。

「おい、しのぶ」はなしかけてきた、声がひくい。

かみなりがゴロゴロ、なりはじめたときみたい。

なんだろう? いやなよかんがする。

「どう、おもう? な、しのぶ」

「なにが?」

「なんとかして、あいつに、かちてぇ!」

そのひとことで、きよしくんがいいたいこと、ぜんぶわかっちゃった。

きょう学校で、きよしくん、しまうまの たかとしくんに、うでずもうの勝負を、いどんだ。

かつとおもってたのに、なんときよしくん、まけちゃった。

ただでさえ、しまうまのたかとしくんは、頭がよくて、かっこよく、やさしくて、クラス一の人気もの。

力でまけちゃったら、ほかにかてそうなこと、きよしくんに、のこってない。

「なぁ、しのぶ。なんかあいつに、かてること、ないかな」

「だいじょうぶだよ。きよしくんだって、たかくんにかってるとこ、あるよ」

「どこが」

「えっ?」ききかえされて、あせった。

「しのぶ、てきとーに、いっただろう」

まずい。ばれてた。なにかいわなきゃ。

「そうだほら。きよしくんて、たかとしくんより、はがじょうぶだし、からだのかわも、じょうぶだし、ほねもきっとじょうぶだし」

「おい、しのぶ。かむぞ!」きよしくんは、を、ガキガキならす。

ほんと、じょうぶそう。ぜったい、かまれたくない。

ぼくは、きよしくんのきもちを、なだめようといった。

「まけてもいいじゃない。たかとしくんは、とくべつだよ」

すると、ばかにしたように、はなで、フンとわらった。

「だからしのぶは、だめなんだよ。ひともわにも、上をめざさなきゃ」

きよしくんは、いうけど、ただ、くやしいだけなんだ。

「よし、じゃあしのぶ、おまえを、『たいけついいん』に、にんめいする」

「はっ? なにそれ?」

「おれが、たかとしにかてるような、たいけつをかんがえてくるんだよ」

「そんなの、むずかしいって」

するときよしくん、「先生もいってただろ。うむずかしいからこそ、やりがいが、あるんじゃねーか!」

じゅぎょうちゅう、ねてばっかりのくせに、こんなのは、きいてるんだ。

「ふふっ。これであいつを、ぎゃふんと いわせてやる。いや、うまだから、ヒヒーンだな」

ほらやっぱり、くやしいだけなんだ。

家にかえったら、おかあさんに、かいものをたのまれた。

「にくじゃがを、つくろうとおもったら、じゃがいもをかうの、わすれてた」だって。

えきまえしょうてんがいの、やおやさんへいくと、うまのなおとくんが、みばんをしていた。

「しのぶ、なにかいにきたの>」

「じゃがいも」

おなじクラスのなおとくんは、たかとしくんのしんせき。

うまだけど、たかとしくんとちがって、しまもようがない。

「あ、ごめん。じゃがいも、うりきれちゃった」なおとくんが、あたまをかいた。

「ええっ、こまったなぁ」

するとなおとくん、「ちょっとまって。うちでつかうぶんが、あったはず。カレーつくるっていってたから」

なおとくんは、おくから、じゃがいもをもってきた。

「なおとくんのうちが、こまるんじゃない?」

「ぜんぜん。じゃがいもが、はいっていないカレー、たべてみたかったんだ」

なおとくん、いつもまえむき。

そうだ。なおとくんに、そうだんしてみよう。

「ちょっといい?」ぼくは、みせのちかくのベンチに、なおとくんを ひっぱっていった。

「なに?」

「きよしくんのことなんだけど......」

たかとしくんとの、しょうぶのことをはなすと、「そんな、ばかみたいなこと、やめさせればいいのに」なおとくんは、かんたんにいう。

「きよしくんって、いいだしたら、ぜったいきかないんだから」

なおとくんは、ちょっとかんがえると、「よし、大食いきょうそうをやろう」たちあがって、ぼくのまえにたった。

「大食いきょうそう? でも、きよしくんとたかとしくんとでは、ぜんぜんたべるものが、ちがってる」

「そこだよ。なんでもかんでも、勝負しようなんてバカげてるって、きよしくんもわかってくれる」

「なるほど!」

「じゃあ、しのぶも、よういするの、てつだってよ」

「うん。わかった」

あさ、学校へいく道で、きよしくんにいうと、「大食いきょうそうか.....。かてるじしんはあるけど、それって、かっこいいのか?」きよしくん、へんなところにこだわる。

「みんなの、ちゅうもくの、まとになるよ。ぜったい、人気ものまちがいなし」

「ならいいんだけどな」

きよしくん、「人気もの」ってことばに、よわいんだ。

そして、日曜日、ちかくのこうえんで、大食いきょうそうを、することになった。

えきまえの、しょうてんがいの人たちが、おもしろがって、じゅんびをてつだってくれた。

ステージまでつくって、ともだちや、きんじょの人も、あつまってきた。

まるでおまつりの、カラオケステージだ。

「きよしくーん」って、手をふる人もいる。

「どうだ、おれの人気は」

きよしくんはいうけど、ただの、おちょうしものにしか、見えない。

「ぼくは、あんまり、気がすすまないなぁ」たかとしくんは、ステージの、うしろのかんばんを見て、ちょっといやな顔をした。

『人気者はおれだ!!大食いせんしゅけん!』

たしかに、たかとしくんの、しゅみじゃない。

「おい、しのぶ。食いものはどこだ。きのうのよるから、なにも食ってねえから、はらへって、しにそーだぜ」

「たべものは、そろそろ、はこんでくると、おもうんだけど.....」

きのうなおとくんと、じゅんびをした。

いまはごきげんな、きよしくんだけど、あれを見たらとおもうと、ドキドキする。

「ほら、きた」

こうえんのまえに、大きなくるまがとまって、ドアがあいた。

なおとくんとおかあさんが、くるまからおりてくる。

なんにんかで、たべものがはいったはこを、ステージのテーブルへはこぶ。

そして、テーブルのうしろに、きよしくんと、たかとしくんがたった。

ともだちや、きんじょのひとが、わらいながら 見まもっている。

しかいはぼく。

「それでは、ただいまより、さばんな小学校、大食い人気もの、せんしゅけんをおこないます!」

いっせいに、はくしゅがわきおこる。

「この、はこのなかにあるものを。はやくたべたほうが、かちです」

みんなのしせんが、テーブルの上にあつまった。

「それでは、あけてもらいましょう!」

なおとくんとおかあさんが、ふたをとった。

とたんに、「おい、しのぶ! どうなってんだ!」きよしくんが、にらんできた。

テーブルにあらわれたのは、きよしくんがきらいな、やさいの山。

きよしくんを見ながら、なおとくんが、ちかづく。

「だからさ、こんなバカなことやめようよ。かちまけだけが、すべてじゃないんだから」

「ぼくも、なおとくんの意見にさんせい」

これは、きのううちあわせしたとおり。

これだけいえば、きよしくんも、「そうだな」って、なっとくしてくれるはずだった。

ところがきよしくん、「ふふーん、そういうことか」じろり、こっちを見た。

「じゃあ、せっかく見にきてくれた、みんなのことは、どうすんだよ。いまさら、ごめんなさいはないだろう」

「それは.....」

きよしくんのいうことも、わかるけど。

「じゃあ、どうすんの?」ぼくはきよしくんにきいた。

「いまさら、ひきさがれないだろう」

「でも、やさいだよ。ピーマン見ただけで、おなかがいたくなるって、いってたじゃない。カボチャをたべると、顔が宇宙人になるって、いってたじゃない」

「うそつきになるより、そっちのほうがましだ。はやくはじめろよ」

ぼくはポケットから、ふえをだした。

「よーい」

ピーッ!

けたましい音が、こうえんにひびく。

しまうまのたかとしくんは、ゆっくり、あじわうように たべはじめた。

「くそう..... かまなきゃいいんだろ」きよしくんはつぶやくと、やさいをらんぼうに、口へほうりこんだ。

ぐんぐん、目のまえのやさいが、へっていく。

たかとしくんは、そんなきよしくんには、おかまいなしで、ゆっくりたべている。

ぼくは、ほっとした。

もしかして、ぜんぶたべられるかも。

でもちがった。

なんかきよしくんの、ようすがへん。

いつもの、みどりいろの顔に、だんだんと、むらさきいろが、まざりはじめた。

しかもまだらに。

そして、手や足にも。目がなきそうになってる。

これって、まずいんじゃない......っておもったら、ーバタン!と、きよしくん。たおれちゃった。

「だいじょうぶ? きよしくん!」

すると、セロリをにぎりしめたまま、「こんなの、くえるわけ、ナイヤガラのたき」

だじゃれもにも、力がない。

きよしくんのしっぽのさきが、くやしさで、こきざみにふるえる。

そのあいだに、たかとしくんは、ぜんぶたべてしまった。

ピーッ! ぼくは、ふえをふいた。

きよしくんまけちゃった。

こうえんに、きよしくんとふたり、とりのこされた。

「そこにすわれ、しのぶ」きよしくんにいわれ、ドキッとした。

顔のいろが、もとにもどってる。

ならんで、コンクリートのきしゃにすわる。

「おかしなこと、たくらんで。けっきょく、おれが、はじをかいただけじゃねーか!」

「だから、なおとくんがいってたでしょ。かちまけだけが、すべてじゃないって。あのとき、やめとけばよかったんだよ」

「しのぶに、わにのきもちなんて、わからないだろうけど、わににはわにの、いじってもんが、あるんだ1」

ドキリとした。

きよしくんの、にぎりしめたこぶしが、ミリミリ音をたてる。

どうしよう。このいかりが、こっちにとんできたら。

「ゆるせねぇ!」きよしくんが、すくっとたった。

きょうふで、おもわずとびのいた。

「きよしくんかまないで」

「かまねーよ!」きよしくんはいうと、すたすたあるいて、こうえんをでていく。

ほっとけなくて、すぐあとをおった。

「どこいくの?」

「もんく、いいに、いくんだよ」

「えっ、だれに? いっとくけど、なおとくんのせいじゃないよ」

きよしくんは、こたえない。

きつね町と、アリクイ町の、あいだをぬける。

やっぱり......。

けんかになったら、どうやってとめよう。

そんなこと、かんがえてたら、きよしくん、えきまえどおりを、すくっと、右にまがって、やおやさんのまえで、たちどまった。

みせさきで、なおとくんがおかあさんと、やさいをならべてる。

きよしくんがゆびさす。

ドキッ!

なおとくんに、ケンカをうるつもりだ。

と、おもったらきよしくん、「やさいがあるから、いけねーんだ。そうおもわねーか、しのぶ」

「いや、それは.....」ていうか、そっちなんだ。

「あら、いらっしゃい、きよしくん。さっきは、ごくろうさん。たのしませてもらったわ」なおとくんのおかあさんが、わらっていう。

「ふん、くだらねぇ。それよりおばさん、きいていいか」

「どーぞ、なんでも」

するときよしくん、おばさんに、こういった。

「ここにあるやさい、ぜんぶなくすためには、どうしたらいいんだ?」

「あらま、どうして?」おばさんが、目をまるくする。

「やさいのせいで、まけたんだぞ」

おばさんは、ふふっとわらうと、「そりゃ、いちばんてっとりばやいのは、ぜんぶ、うっちまうことだね」

「なるほど。よし、しのぶ。てっとりばやく、ぜんぶ、うっちまおーぜ」

「はっ?」

きよしくんの、かんがえてること、やっぱりわかんない。

「そうだ。こんなとこで、じっとまってるより、うりにいったほうがはやいぜ。おばさん、くるまかりるぜ」

「えっ? きよしくん、くるま、うんてんできるの」

「ああ、ひっぱるやつな」

「それって、もしかして.....」

きよしくんは、やさいをいっぱい、リアカーにつんでもらった。

なおとくんも、おもしろがってついてきた。

「ほら、しのぶもなおとも、うしろからおしてクレーンしゃ」リアカーをひっぱりながら、やっぱり、だじゃれにキレがない。

「しまうま町まで、うりながらあるいていけば、ぜんぶうれるだろ」

きよしくん、かくせいきまでかりてきて、大きな声でがなりたてる。

しかも、「せいかくがわるいやさい、いかがですかー。こんなの、くうやつの気がしれねーやさい、いかがですかー。見ただけで、おなかがいたくなるやさい、いかがですかー」

「だめだってきよしくん! それじゃやさい、うれないよ」

「じゃあ、なおと、できるのか?」

「そりゃ、ちょっとくらいなら」なおとくんが、かくせいきをうけとった。

「おいしいやさい、いかがですかー。とれたての、みずみずしい、やさいですよー。どんなりょうりにもあう、やさいですよー」

さすが! いつも、おみせのてつだい、しているだけのことはある。

あちこちの家から、おかあさんがでてきて、あっというまに、ひとだかりや、うまだかりが、できてしまった。

しかも、みんなきよしくんを見ると、「いやあー、さっきは、たのしませてもらったよ」とか、「もういっかい、たおれるとこ、やって見せてよ」とか、すごい人気。

「ほら、まけても人気ものだよ。きよしくん」

「こんな人気うれしくねえ」とかいいながら、きよしくん「ありがとう」って、あくしゅしてるし。

そして、リアカーにのせてきたやさいも、じゅんちょうにうれた。

「じゃあ、いったん、もどるぜ」きよしくんはいって、リアカーを、ひっぱる。

うれのこった、じゃがいもが一こ、ころころ、音をたててころがる。

かどをまがると、しまうまのたかくんがいた。

じぶんの、家のまえに、いもうとの、すずかちゃんとふたりで。

しかもすずかちゃん、わんわんないていた。

「おいおい、ながい顔して、いもうとなかしてんじゃねーよ」きよしくんがいう。

じぶんだって、ながい顔してるくせに。しかもでかいし。

「そうだ、ちょうどいい。だれが、このこをなきやませるか、勝負しようぜ」きよしくんがいいだした。

たかとくんは、「よかった。なきやまなくて、こまってたんだ」って、よろこんでひきうけた。

まず、おにいさんの、たかとしくんから。

「ほら、いいこだから。おかあさん、もうすぐ、かえってくるから」

あたまをなでても、すずかちゃんは、くびをふって、いやいやするばかり。

「なおとにも、やらせてあげはちょう」きよしくん、すっごくうれしそう。

するとなおとくんは、「べろべろばー」とか、「いないいないばー」とか、へんな顔をしてみせる。

でも、すずかちゃんは、ないたまま。

「なおと、そんなんでわらったら、せかいじゅうから、おもちゃがいらなくなるぜ」きよしくんが、ばかにする。

「それって、いいすぎだよ」

ぼくがいうと、「いいかしのぶ、こういうときは、じぶんがおもちゃになったつもりで、ぶちあたっていかなきゃ、いけねーんだ」

そしてきよしくん、むこうからあるいてくると、すずかちゃんのまえで、とつぜんころんだ。

しかも、おもいきり。

すると、すずかちゃんが、なきやんだ。

きよしくんはおきあがると、こんどは走ってきて、でんちゅうにぶつかってころぶ。

するとすずかちゃん、あははって、わらいだした。

「よし、もういっかい」

どっしーーーん!

ずっでーーーん!

すずかちゃんの、わらいごえが、どんどん大きくなる。

だけど、きよしくん、ほんとうにいたそう。

「きよしくん、だいじょうぶ?」

「わらってくれたら、これくらい、なんてことねーよ」

すっかりきよしくんを、気にいったすずかちゃんは、こんどは、きよしくんの、しっぽにつかまった。

ぶるんぶるんふられて、きゃっきゃ、よろこんでる。

そしてこんどは、すずかちゃんを、あたまにのせて、くるくるはげしくまわる。

つぎのしゅんかん、バッシーン! と、きょうれつな音がした。

きよしくんのしっぽが、でんちゅうにぶちあたったんだ。

でんちゅうは、だいじょうぶだったけど、きよしくん、むちゃくちゃいたそう。

ころんで、おきあがれそうにない。

「しっぽのさきっぽは、おれの、きゅうしょなんだ」きよしくんが、うんうんうめく。

えっ、そうだったの? しらなかった。

でも、ほんとうみたい。

さっき、やさいをたべたときみたいな、なきそうな、まだら顔になってる。

「じゃあ、きよしくん、リアカーにのってよ。ぼくが、家までおくってあげる」なおとくんがいう。

「それは、ありがとう」きよしくん、まともにこたえてる。

だじゃれもでてこないって、よっぽどいたいんだ。

「わたしも、のりたい」きよしくんのとなりに、すずかちゃんが、とびのった。

なおとくんがリアカーをひいて、ぼくとたかとしくんが、うしろからおす。

「どうだ、おれのかちだろう!」あおむけになったまま、きよしくんが、ぼくを見ていった。

「うーん?」

「おもわねえのか?」

きよしくんのやりかたって、やっぱり、なんかへん。

だから、「よくわかんない」って、こたえると、「そんなことも、わかんないようじゃ、しのぶに、たいけついいんはむりだな」

それをきいて、ほっとした。

たいけつのことは、よくわかんないけど、ひとつ、わかったことがある。

きよしくん、だれにでも、どんなときでも、本気でたちむかう。

だからみんな、きよしくんのことが、すきなんだ。

いまだって、しりとりしながら、「あっ、ぞうさんって、いっただろ!」

「ちがうよ。ぞうさんのおはなって、いいたかったの!」すずかちゃんと、いいあってる。

「しのぶくん、ぼくも、きよしくんみたいに、なりたいな」たかとしくんが、いったとたん、

「しまうまが、わにになれるわけ、ねーだろ」きよしくんがいう。

きいてたんだ。

「いや、そういういみじゃなくって.....」

ぼくがいいかけたときには、もう、すずかちゃんと、にらみあってた。

「まけを、みとめねーと、かむぞ!」

きよしくんって、ことばはちょっとらんぼうだけど、せかいいち、本気がにあう、わになんだ。

おしまい


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