Let's learn Japanese with Story Time!
In this page, we will explore English translations of Japanese short story of ”ともだちはうま” (TOMODACHI HA UMA).
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ともだちはうま TOMODACHI HA UMA
学校のかえり道。
わにのきよしくん、なんだかしずんだ顔をしてる。
「おい、しのぶ」はなしかけてきた、声がひくい。
かみなりがゴロゴロ、なりはじめたときみたい。
なんだろう? いやなよかんがする。
「どう、おもう? な、しのぶ」
「なにが?」
「なんとかして、あいつに、かちてぇ!」
そのひとことで、きよしくんがいいたいこと、ぜんぶわかっちゃった。
きょう学校で、きよしくん、しまうまの たかとしくんに、うでずもうの勝負を、いどんだ。
かつとおもってたのに、なんときよしくん、まけちゃった。
ただでさえ、しまうまのたかとしくんは、頭がよくて、かっこよく、やさしくて、クラス一の人気もの。
力でまけちゃったら、ほかにかてそうなこと、きよしくんに、のこってない。
「なぁ、しのぶ。なんかあいつに、かてること、ないかな」
「だいじょうぶだよ。きよしくんだって、たかくんにかってるとこ、あるよ」
「どこが」
「えっ?」ききかえされて、あせった。
「しのぶ、てきとーに、いっただろう」
まずい。ばれてた。なにかいわなきゃ。
「そうだほら。きよしくんて、たかとしくんより、はがじょうぶだし、からだのかわも、じょうぶだし、ほねもきっとじょうぶだし」
「おい、しのぶ。かむぞ!」きよしくんは、を、ガキガキならす。
ほんと、じょうぶそう。ぜったい、かまれたくない。
ぼくは、きよしくんのきもちを、なだめようといった。
「まけてもいいじゃない。たかとしくんは、とくべつだよ」
すると、ばかにしたように、はなで、フンとわらった。
「だからしのぶは、だめなんだよ。ひともわにも、上をめざさなきゃ」
きよしくんは、いうけど、ただ、くやしいだけなんだ。
「よし、じゃあしのぶ、おまえを、『たいけついいん』に、にんめいする」
「はっ? なにそれ?」
「おれが、たかとしにかてるような、たいけつをかんがえてくるんだよ」
「そんなの、むずかしいって」
するときよしくん、「先生もいってただろ。うむずかしいからこそ、やりがいが、あるんじゃねーか!」
じゅぎょうちゅう、ねてばっかりのくせに、こんなのは、きいてるんだ。
「ふふっ。これであいつを、ぎゃふんと いわせてやる。いや、うまだから、ヒヒーンだな」
ほらやっぱり、くやしいだけなんだ。
家にかえったら、おかあさんに、かいものをたのまれた。
「にくじゃがを、つくろうとおもったら、じゃがいもをかうの、わすれてた」だって。
えきまえしょうてんがいの、やおやさんへいくと、うまのなおとくんが、みばんをしていた。
「しのぶ、なにかいにきたの>」
「じゃがいも」
おなじクラスのなおとくんは、たかとしくんのしんせき。
うまだけど、たかとしくんとちがって、しまもようがない。
「あ、ごめん。じゃがいも、うりきれちゃった」なおとくんが、あたまをかいた。
「ええっ、こまったなぁ」
するとなおとくん、「ちょっとまって。うちでつかうぶんが、あったはず。カレーつくるっていってたから」
なおとくんは、おくから、じゃがいもをもってきた。
「なおとくんのうちが、こまるんじゃない?」
「ぜんぜん。じゃがいもが、はいっていないカレー、たべてみたかったんだ」
なおとくん、いつもまえむき。
そうだ。なおとくんに、そうだんしてみよう。
「ちょっといい?」ぼくは、みせのちかくのベンチに、なおとくんを ひっぱっていった。
「なに?」
「きよしくんのことなんだけど......」
たかとしくんとの、しょうぶのことをはなすと、「そんな、ばかみたいなこと、やめさせればいいのに」なおとくんは、かんたんにいう。
「きよしくんって、いいだしたら、ぜったいきかないんだから」
なおとくんは、ちょっとかんがえると、「よし、大食いきょうそうをやろう」たちあがって、ぼくのまえにたった。
「大食いきょうそう? でも、きよしくんとたかとしくんとでは、ぜんぜんたべるものが、ちがってる」
「そこだよ。なんでもかんでも、勝負しようなんてバカげてるって、きよしくんもわかってくれる」
「なるほど!」
「じゃあ、しのぶも、よういするの、てつだってよ」
「うん。わかった」
あさ、学校へいく道で、きよしくんにいうと、「大食いきょうそうか.....。かてるじしんはあるけど、それって、かっこいいのか?」きよしくん、へんなところにこだわる。
「みんなの、ちゅうもくの、まとになるよ。ぜったい、人気ものまちがいなし」
「ならいいんだけどな」
きよしくん、「人気もの」ってことばに、よわいんだ。
そして、日曜日、ちかくのこうえんで、大食いきょうそうを、することになった。
えきまえの、しょうてんがいの人たちが、おもしろがって、じゅんびをてつだってくれた。
ステージまでつくって、ともだちや、きんじょの人も、あつまってきた。
まるでおまつりの、カラオケステージだ。
「きよしくーん」って、手をふる人もいる。
「どうだ、おれの人気は」
きよしくんはいうけど、ただの、おちょうしものにしか、見えない。
「ぼくは、あんまり、気がすすまないなぁ」たかとしくんは、ステージの、うしろのかんばんを見て、ちょっといやな顔をした。
『人気者はおれだ!!大食いせんしゅけん!』
たしかに、たかとしくんの、しゅみじゃない。
「おい、しのぶ。食いものはどこだ。きのうのよるから、なにも食ってねえから、はらへって、しにそーだぜ」
「たべものは、そろそろ、はこんでくると、おもうんだけど.....」
きのうなおとくんと、じゅんびをした。
いまはごきげんな、きよしくんだけど、あれを見たらとおもうと、ドキドキする。
「ほら、きた」
こうえんのまえに、大きなくるまがとまって、ドアがあいた。
なおとくんとおかあさんが、くるまからおりてくる。
なんにんかで、たべものがはいったはこを、ステージのテーブルへはこぶ。
そして、テーブルのうしろに、きよしくんと、たかとしくんがたった。
ともだちや、きんじょのひとが、わらいながら 見まもっている。
しかいはぼく。
「それでは、ただいまより、さばんな小学校、大食い人気もの、せんしゅけんをおこないます!」
いっせいに、はくしゅがわきおこる。
「この、はこのなかにあるものを。はやくたべたほうが、かちです」
みんなのしせんが、テーブルの上にあつまった。
「それでは、あけてもらいましょう!」
なおとくんとおかあさんが、ふたをとった。
とたんに、「おい、しのぶ! どうなってんだ!」きよしくんが、にらんできた。
テーブルにあらわれたのは、きよしくんがきらいな、やさいの山。
きよしくんを見ながら、なおとくんが、ちかづく。
「だからさ、こんなバカなことやめようよ。かちまけだけが、すべてじゃないんだから」
「ぼくも、なおとくんの意見にさんせい」
これは、きのううちあわせしたとおり。
これだけいえば、きよしくんも、「そうだな」って、なっとくしてくれるはずだった。
ところがきよしくん、「ふふーん、そういうことか」じろり、こっちを見た。
「じゃあ、せっかく見にきてくれた、みんなのことは、どうすんだよ。いまさら、ごめんなさいはないだろう」
「それは.....」
きよしくんのいうことも、わかるけど。
「じゃあ、どうすんの?」ぼくはきよしくんにきいた。
「いまさら、ひきさがれないだろう」
「でも、やさいだよ。ピーマン見ただけで、おなかがいたくなるって、いってたじゃない。カボチャをたべると、顔が宇宙人になるって、いってたじゃない」
「うそつきになるより、そっちのほうがましだ。はやくはじめろよ」
ぼくはポケットから、ふえをだした。
「よーい」
ピーッ!
けたましい音が、こうえんにひびく。
しまうまのたかとしくんは、ゆっくり、あじわうように たべはじめた。
「くそう..... かまなきゃいいんだろ」きよしくんはつぶやくと、やさいをらんぼうに、口へほうりこんだ。
ぐんぐん、目のまえのやさいが、へっていく。
たかとしくんは、そんなきよしくんには、おかまいなしで、ゆっくりたべている。
ぼくは、ほっとした。
もしかして、ぜんぶたべられるかも。
でもちがった。
なんかきよしくんの、ようすがへん。
いつもの、みどりいろの顔に、だんだんと、むらさきいろが、まざりはじめた。
しかもまだらに。
そして、手や足にも。目がなきそうになってる。
これって、まずいんじゃない......っておもったら、ーバタン!と、きよしくん。たおれちゃった。
「だいじょうぶ? きよしくん!」
すると、セロリをにぎりしめたまま、「こんなの、くえるわけ、ナイヤガラのたき」
だじゃれもにも、力がない。
きよしくんのしっぽのさきが、くやしさで、こきざみにふるえる。
そのあいだに、たかとしくんは、ぜんぶたべてしまった。
ピーッ! ぼくは、ふえをふいた。
きよしくんまけちゃった。
こうえんに、きよしくんとふたり、とりのこされた。
「そこにすわれ、しのぶ」きよしくんにいわれ、ドキッとした。
顔のいろが、もとにもどってる。
ならんで、コンクリートのきしゃにすわる。
「おかしなこと、たくらんで。けっきょく、おれが、はじをかいただけじゃねーか!」
「だから、なおとくんがいってたでしょ。かちまけだけが、すべてじゃないって。あのとき、やめとけばよかったんだよ」
「しのぶに、わにのきもちなんて、わからないだろうけど、わににはわにの、いじってもんが、あるんだ1」
ドキリとした。
きよしくんの、にぎりしめたこぶしが、ミリミリ音をたてる。
どうしよう。このいかりが、こっちにとんできたら。
「ゆるせねぇ!」きよしくんが、すくっとたった。
きょうふで、おもわずとびのいた。
「きよしくんかまないで」
「かまねーよ!」きよしくんはいうと、すたすたあるいて、こうえんをでていく。
ほっとけなくて、すぐあとをおった。
「どこいくの?」
「もんく、いいに、いくんだよ」
「えっ、だれに? いっとくけど、なおとくんのせいじゃないよ」
きよしくんは、こたえない。
きつね町と、アリクイ町の、あいだをぬける。
やっぱり......。
けんかになったら、どうやってとめよう。
そんなこと、かんがえてたら、きよしくん、えきまえどおりを、すくっと、右にまがって、やおやさんのまえで、たちどまった。
みせさきで、なおとくんがおかあさんと、やさいをならべてる。
きよしくんがゆびさす。
ドキッ!
なおとくんに、ケンカをうるつもりだ。
と、おもったらきよしくん、「やさいがあるから、いけねーんだ。そうおもわねーか、しのぶ」
「いや、それは.....」ていうか、そっちなんだ。
「あら、いらっしゃい、きよしくん。さっきは、ごくろうさん。たのしませてもらったわ」なおとくんのおかあさんが、わらっていう。
「ふん、くだらねぇ。それよりおばさん、きいていいか」
「どーぞ、なんでも」
するときよしくん、おばさんに、こういった。
「ここにあるやさい、ぜんぶなくすためには、どうしたらいいんだ?」
「あらま、どうして?」おばさんが、目をまるくする。
「やさいのせいで、まけたんだぞ」
おばさんは、ふふっとわらうと、「そりゃ、いちばんてっとりばやいのは、ぜんぶ、うっちまうことだね」
「なるほど。よし、しのぶ。てっとりばやく、ぜんぶ、うっちまおーぜ」
「はっ?」
きよしくんの、かんがえてること、やっぱりわかんない。
「そうだ。こんなとこで、じっとまってるより、うりにいったほうがはやいぜ。おばさん、くるまかりるぜ」
「えっ? きよしくん、くるま、うんてんできるの」
「ああ、ひっぱるやつな」
「それって、もしかして.....」
きよしくんは、やさいをいっぱい、リアカーにつんでもらった。
なおとくんも、おもしろがってついてきた。
「ほら、しのぶもなおとも、うしろからおしてクレーンしゃ」リアカーをひっぱりながら、やっぱり、だじゃれにキレがない。
「しまうま町まで、うりながらあるいていけば、ぜんぶうれるだろ」
きよしくん、かくせいきまでかりてきて、大きな声でがなりたてる。
しかも、「せいかくがわるいやさい、いかがですかー。こんなの、くうやつの気がしれねーやさい、いかがですかー。見ただけで、おなかがいたくなるやさい、いかがですかー」
「だめだってきよしくん! それじゃやさい、うれないよ」
「じゃあ、なおと、できるのか?」
「そりゃ、ちょっとくらいなら」なおとくんが、かくせいきをうけとった。
「おいしいやさい、いかがですかー。とれたての、みずみずしい、やさいですよー。どんなりょうりにもあう、やさいですよー」
さすが! いつも、おみせのてつだい、しているだけのことはある。
あちこちの家から、おかあさんがでてきて、あっというまに、ひとだかりや、うまだかりが、できてしまった。
しかも、みんなきよしくんを見ると、「いやあー、さっきは、たのしませてもらったよ」とか、「もういっかい、たおれるとこ、やって見せてよ」とか、すごい人気。
「ほら、まけても人気ものだよ。きよしくん」
「こんな人気うれしくねえ」とかいいながら、きよしくん「ありがとう」って、あくしゅしてるし。
そして、リアカーにのせてきたやさいも、じゅんちょうにうれた。
「じゃあ、いったん、もどるぜ」きよしくんはいって、リアカーを、ひっぱる。
うれのこった、じゃがいもが一こ、ころころ、音をたててころがる。
かどをまがると、しまうまのたかくんがいた。
じぶんの、家のまえに、いもうとの、すずかちゃんとふたりで。
しかもすずかちゃん、わんわんないていた。
「おいおい、ながい顔して、いもうとなかしてんじゃねーよ」きよしくんがいう。
じぶんだって、ながい顔してるくせに。しかもでかいし。
「そうだ、ちょうどいい。だれが、このこをなきやませるか、勝負しようぜ」きよしくんがいいだした。
たかとくんは、「よかった。なきやまなくて、こまってたんだ」って、よろこんでひきうけた。
まず、おにいさんの、たかとしくんから。
「ほら、いいこだから。おかあさん、もうすぐ、かえってくるから」
あたまをなでても、すずかちゃんは、くびをふって、いやいやするばかり。
「なおとにも、やらせてあげはちょう」きよしくん、すっごくうれしそう。
するとなおとくんは、「べろべろばー」とか、「いないいないばー」とか、へんな顔をしてみせる。
でも、すずかちゃんは、ないたまま。
「なおと、そんなんでわらったら、せかいじゅうから、おもちゃがいらなくなるぜ」きよしくんが、ばかにする。
「それって、いいすぎだよ」
ぼくがいうと、「いいかしのぶ、こういうときは、じぶんがおもちゃになったつもりで、ぶちあたっていかなきゃ、いけねーんだ」
そしてきよしくん、むこうからあるいてくると、すずかちゃんのまえで、とつぜんころんだ。
しかも、おもいきり。
すると、すずかちゃんが、なきやんだ。
きよしくんはおきあがると、こんどは走ってきて、でんちゅうにぶつかってころぶ。
するとすずかちゃん、あははって、わらいだした。
「よし、もういっかい」
どっしーーーん!
ずっでーーーん!
すずかちゃんの、わらいごえが、どんどん大きくなる。
だけど、きよしくん、ほんとうにいたそう。
「きよしくん、だいじょうぶ?」
「わらってくれたら、これくらい、なんてことねーよ」
すっかりきよしくんを、気にいったすずかちゃんは、こんどは、きよしくんの、しっぽにつかまった。
ぶるんぶるんふられて、きゃっきゃ、よろこんでる。
そしてこんどは、すずかちゃんを、あたまにのせて、くるくるはげしくまわる。
つぎのしゅんかん、バッシーン! と、きょうれつな音がした。
きよしくんのしっぽが、でんちゅうにぶちあたったんだ。
でんちゅうは、だいじょうぶだったけど、きよしくん、むちゃくちゃいたそう。
ころんで、おきあがれそうにない。
「しっぽのさきっぽは、おれの、きゅうしょなんだ」きよしくんが、うんうんうめく。
えっ、そうだったの? しらなかった。
でも、ほんとうみたい。
さっき、やさいをたべたときみたいな、なきそうな、まだら顔になってる。
「じゃあ、きよしくん、リアカーにのってよ。ぼくが、家までおくってあげる」なおとくんがいう。
「それは、ありがとう」きよしくん、まともにこたえてる。
だじゃれもでてこないって、よっぽどいたいんだ。
「わたしも、のりたい」きよしくんのとなりに、すずかちゃんが、とびのった。
なおとくんがリアカーをひいて、ぼくとたかとしくんが、うしろからおす。
「どうだ、おれのかちだろう!」あおむけになったまま、きよしくんが、ぼくを見ていった。
「うーん?」
「おもわねえのか?」
きよしくんのやりかたって、やっぱり、なんかへん。
だから、「よくわかんない」って、こたえると、「そんなことも、わかんないようじゃ、しのぶに、たいけついいんはむりだな」
それをきいて、ほっとした。
たいけつのことは、よくわかんないけど、ひとつ、わかったことがある。
きよしくん、だれにでも、どんなときでも、本気でたちむかう。
だからみんな、きよしくんのことが、すきなんだ。
いまだって、しりとりしながら、「あっ、ぞうさんって、いっただろ!」
「ちがうよ。ぞうさんのおはなって、いいたかったの!」すずかちゃんと、いいあってる。
「しのぶくん、ぼくも、きよしくんみたいに、なりたいな」たかとしくんが、いったとたん、
「しまうまが、わにになれるわけ、ねーだろ」きよしくんがいう。
きいてたんだ。
「いや、そういういみじゃなくって.....」
ぼくがいいかけたときには、もう、すずかちゃんと、にらみあってた。
「まけを、みとめねーと、かむぞ!」
きよしくんって、ことばはちょっとらんぼうだけど、せかいいち、本気がにあう、わになんだ。
おしまい